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2026年9月22日 · 約5分

「若者はニュースに興味がない」? 新聞を無料にしたら70%が登録した

フランス9,628人の実験が示したのは、若者の無関心ではなく「入口」の力だった。

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学校でスマートフォンやタブレットを使って情報を見る高校生たち

「若者はニュースに興味がない」は、最初から少し違っていた

高校生はニュースを読まない。SNSばかり見て、政治や経済には興味がない。そんなイメージは強い。ところが、フランスの高校243校・9,628人を対象にした大規模な無作為化比較試験は、まずその前提から揺さぶった。

実験前の調査で、政治・経済・社会のニュースを「まったく追わない」と答えた生徒は7%だけだった。興味のある分野として政治を挙げたのは50%、国際ニュースは47%。一方、直近7日間に情報源としてSNSを使った生徒は81%だったのに対し、新聞を使ったのは19%だった。

ここから見えるのは、「関心がない」と「新聞を読まない」は同じではないということだ。若者がニュースから離れているように見える理由の一部は、興味ではなく、アクセスや習慣、学校でニュースに触れるきっかけの差かもしれない。

無料で新聞を渡したら、70%が登録した

研究チームは2024〜25年度、参加校を4つのグループに無作為に分けた。①大手紙Le Mondeのデジタル版を1年間無料提供、②教師がメディア教育を行う、③その両方、④何もしない対照群だ。

無料アクセスを提供された2,494人のうち、1,753人、つまり70.3%が購読を有効化した。そのうち87.7%はサイトを10回以上訪れ、63.8%は50回以上訪問した。

「無料でも若者は新聞なんて読まない」と考えると、かなり意外な数字だ。しかも利用は授業時間だけではない。アクセスの19%は週末、15%は夜8時から深夜0時に起きていた。学校から渡されたアカウントが、学校の外でも使われていた。

ただし、同じクラスの2人は別クラスの2人より8.34倍同じ記事を読む傾向があった。無料にしただけで突然全員が自主的なニュース好きになったわけではなく、授業や宿題、友人との共通話題も読書を押していた可能性がある。

新聞を主要情報源にする高校生は、約20%から40%以上へ

効果は登録数だけではなかった。主要な情報源5つの中に新聞を挙げる生徒の割合は、対照群の約20%から40%以上へと2倍以上になった。直近7日間に主要な全国紙・週刊紙のどれかを使った割合も47%から64〜66%へ増えた。

一方、メディア教育だけでは新聞消費そのものは増えなかった。アクセスを無料にしたグループで大きく増え、無料アクセスと教育を組み合わせるとやや効果が強かった。

さらに、介入を受けた生徒は主要な情報源としてSNSを挙げる確率が5〜8ポイント下がった。ただしテレビなど他のニュース源の利用まで落ちたわけではない。新聞が他の情報を全部置き換えたというより、情報源の組み合わせが変わり、利用する情報源の多様性も増えた。

ここは「SNSを禁止すればいい」という話とは違う。質の高い情報への入口を増やすことで、情報環境のバランスが変わった。

一番大きく変わったのは、もともと情報格差が大きかった学校だった

さらに重要なのが、ニュースを「読んだ量」ではなく「知識」まで測った結果だ。全生徒をまとめると、ニュース知識への平均効果は統計的に有意ではなかった。

しかし、社会経済的に不利な生徒が多い高校に絞ると結果が変わる。無料アクセスだけでニュース知識は0.20標準偏差、無料アクセスとメディア教育の組み合わせでは0.31標準偏差上昇した。もともと不利な学校と有利な学校の知識差は0.45標準偏差あったため、研究者の計算では、この差の約45〜70%に相当する幅が縮まった。

対照的に、社会経済的に有利な学校ではニュース知識への統計的に有意な効果は確認されなかった。

同じ新聞を無料にしても、全員に同じだけ効くわけではない。すでに家庭や学校からニュースへアクセスしやすい生徒より、入口が少なかった生徒の方が大きく変わった可能性がある。情報格差は「頭の良さ」の差ではなく、情報へ入る扉の数の差でも作られる。

無料期間が終わっても、一部は戻ってきた

無料サービスにはよくある疑問がある。「無料だから使っただけで、終われば元に戻るのでは?」だ。

この実験では、介入中にLe Mondeを訪れた生徒の約20%が、実験終了から数か月後の2025年11〜12月にもサイトへ戻った。さらに2026年4〜5月の追跡調査では、無料アクセスとメディア教育を組み合わせた群で、Le Mondeを購読している確率が対照群より8ポイント高かった。研究者は、対照群平均に対して約66%の増加に相当するとしている。

もちろん、全員が有料購読者になったわけではないし、効果の中心は実験で提供されたLe Mondeだった。他紙の利用が同じように大きく増えたわけでもない。

それでも、一年間の「入口」が、その後の需要や習慣の一部に残った可能性はある。ニュースを読む人と読まない人の違いを、固定した性格や世代特性だけで説明するのは難しくなる。

ただし「新聞を無料にすれば民主主義が良くなる」とまでは言えない

この研究は強い設計だが、限界もある。対象はフランスの高校生で、提供されたのは特定の大手紙だった。日本の高校生に同じ施策をして同じ数字になる保証はない。

また、ニュース知識の改善が大きかったのは不利な学校であり、全体平均では明確な知識効果が出ていない。メディアリテラシーの改善も0.08〜0.26標準偏差で、すべての測定項目が大きく変わったわけではない。研究は「新聞を読めば政治参加が増える」「誤情報に絶対だまされなくなる」と証明したものでもない。

もう一つ面白いのは、教師のメディア教育経験が多いほど効果が強かった点だ。一度の研修で誰でも同じ授業ができるわけではなく、教える側の経験も重要だった。

だから政策として考えるなら、無料アカウントを配るだけでも、メディア教育だけでも十分とは限らない。アクセス、授業、教師の経験、友人との共通話題が組み合わさって、ニュースを読む環境ができていた可能性がある。

「若者がニュースを読まない」の主語は、本当に若者なのか

この研究から最も持ち帰りたいのは、「高校生にもっとニュースへ関心を持たせよう」という精神論ではない。

若者の行動を見て「最近の若者は興味がない」と結論づける前に、その行動を生んでいる環境を疑えるということだ。有料の壁がある。普段使う場所に良質なニュースが出てこない。学校で読むきっかけがない。周囲に同じ記事を読む人がいない。そうした小さな摩擦が重なると、興味があっても行動にはならない。

逆に入口を一つ変えると、70%が登録し、新聞を主要情報源にする割合が倍以上になり、不利な学校では情報格差まで大きく縮んだ。

「読まないから、興味がない」のではなく、「読みやすい環境がないから、読んでいない」人が混ざっているかもしれない。

これはニュースだけの話ではない。ボランティア、投票、文化、学習、地域活動でも、参加しない人を「意識が低い」と見る前に、入口の設計を見直す余地がある。人の関心は、環境と切り離して測れない。

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