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2026年10月22日 · 約5分

イエメン、水道を止めるのは「水不足」だけではない

水をくむポンプには燃料がいる。治療食には運ぶ道路がいる。イエメン・タイズで同時に弱っている生活の仕組みを追う。

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Group of smiling children gesturing peace signs outdoors in Tarim, Yemen.

水をくむ列が、毎日の恐怖になった

イエメン南西部の都市タイズ。水を入れる容器を持って列に並ぶことが、子どもたちの日常になっている。ユニセフが2026年10月21日に公表した説明では、避難生活を送る11歳のサファさんは、水をくむために長く待ち、人々が水をめぐって争う光景が怖いと話した。水は飲むためだけではない。食事を作り、手を洗い、病気を防ぐためにも必要だ。

ユニセフによれば、タイズ県では約300万人が利用する給水システムが危機にさらされ、そのうち少なくとも160万人は子どもだ。ただし、これは300万人がすでに断水したという意味ではない。今ある水の供給を続けられるかが問われている。なぜ、ここまで追い込まれたのだろう。

水道を止めるのは、水不足だけではない

タイズはもともと水資源が乏しい地域だ。だが今回の危機を理解する鍵は、水そのものよりも「燃料」にある。水を地下からくみ上げ、送水するポンプにはディーゼル燃料が必要だ。9月以降の戦闘でタイズとアデンを結ぶ重要な補給路などが使いにくくなり、燃料が十分に届かなくなった。ポンプが止まったり、稼働時間が短くなったりすれば、水源が残っていても家庭に水が届かない。

ロイターの10月21日の現地取材では、国際NGOセーブ・ザ・チルドレンがタイズの水生産量は約半分になったと説明した。つまり、ここで不足しているのは水だけではなく、ポンプを動かすための燃料、運ぶ道路、運転を続ける仕組みでもある。

さらに、紛争の影響は一つの道路だけに限らない。給水車が水源へ近づけなかったり、修理のための部品を運べなかったりすれば、復旧も難しくなる。現地当局者はロイターに、主要な取水源へのアクセスが制限されていると説明した。必要なのはポンプの修理だけではなく、ポンプを動かし続けられる環境だ。

水の値段が3倍になると、食費も削られる

水道が不安定になると、人々は給水車に頼る。しかし、その給水車も燃料と通行できる道路が必要だ。ユニセフの10月20日の会見では、給水車1台分の水の価格が、戦闘激化前の約2万3,000イエメン・リアルから約7万リアルへ上がったと説明された。約3倍だ。これは「水1リットル」の価格ではなく、給水車1台分の比較である。

家族の手元のお金が変わらなければ、水を買うために食費を減らさざるを得ないかもしれない。給水所で何時間も待つ時間は、働く時間や子どもの学習時間にも影響する。現地では飲み水を節約する家庭も出ている。水の問題が、家計全体の問題へ広がっている。

ごみが回収できず、病気の危険も高まる

燃料が足りず道路も通れないと、水道以外のサービスも止まり始める。タイズでは、ごみ収集車が処分場へ行けなくなり、街路にごみが積み上がっている。ロイターは、処分場に近づけないため路上でごみを燃やす作業員の証言も伝えた。衛生状態の悪化は感染症の危険を高める。

世界保健機関(WHO)が10月20日の国連会見で示した数字では、イエメン全国のコレラ疑いの週次報告数は9月上旬の221件から10月上旬の683件へ増えた。これは確定診断数でも、タイズだけの数字でもない。だが安全な水と衛生設備が不足すれば、下痢を起こす病気が広がりやすい。水がないことは、のどの渇きだけで終わらない。

食べ物があっても、栄養が体に残らない

ここから問題は、さらに深くなる。ユニセフは2026年にタイズで16万8,000人以上の子どもの栄養状態を調べ、そのうち5万2,000人以上に急性栄養不良が見つかったと報告した。約3人に1人だが、これは検査を受けた子どもの割合で、タイズの全児童の割合ではない。

下痢が続くと、体は水分を失うだけでなく、必要な栄養も十分に取り込めなくなる。栄養不足の子どもは感染症にかかりやすく、病気になるとさらに栄養状態が悪化する。WHOも、下痢と栄養不良が互いを悪化させる関係を指摘している。つまり「水を届けること」と「食事を届けること」は、別々の支援では済まないのだ。

第二の驚き:治療食は確保しても、子どもに届かない

では、栄養不良の子どもに治療食を届ければよいのではないか。ここに、もう一つの壁がある。ユニセフは重い急性栄養不良の治療に使う「すぐに食べられる治療食」を約8,000箱、タイズ向けに事前に確保していた。それでも10月20日の会見では、各地の医療施設へ運ぶ道路が戦闘で使えず、施設での在庫切れにつながっていると説明した。

足りないのは治療食の生産量だけではない。必要な場所まで安全に運ぶ道がない。世界食糧計画(WFP)は10月14日、タイズで支援を必要とする60万人以上にアクセスできず、西海岸などを含めると計80万人が支援の届かない状況にあると警告した。支援物資が用意されていても、それだけでは命を守れない。

病院にも、約4日分の燃料しかなかった

さらにWHOは10月20日、タイズの12病院で燃料の残りが約4日分だと説明した。127種類の必須医薬品のうち115種類は、在庫が約1週間以下とされた。医療施設が止まれば、感染症だけでなく、透析、集中治療、新生児の保育器など、電力や酸素を必要とする治療も危うくなる。これは10月20日時点の報告であり、すべての病院が4日後に停止すると確定したものではない。

同じ燃料不足が、水のポンプ、給水車、ごみ収集、病院に影響する。さらに道路の封鎖が、食料と医薬品の輸送を妨げる。ひとつの障害が、いくつもの生活の支えを同時に弱らせている。

必要なのは、水だけでなく「届く道」

もちろん、短期的には燃料の供給、安全な飲料水、治療食、医薬品を急いで届ける必要がある。ユニセフは給水システムを動かすための燃料を支援し、30万人以上に緊急の水・衛生支援を提供している。一方で、補給路の安全が確保されなければ、物資があっても継続的に届けられない。国連機関は紛争当事者に対し、民間人と水道・医療施設の保護、人道支援のための安全な通行を求めている。

「水不足」と聞くと、雨や井戸のことを考えがちだ。しかしタイズで見えてくるのは、水を使えるようにするには、燃料、道路、衛生、医療、そして安全が必要だという現実だ。社会の仕組みは、一つずつ独立して動いているわけではない。

今回の国連会見でユニセフは、通行の問題を解決するには一方だけでなく、戦闘を続ける双方との調整が必要だと述べた。支援の仕組みを立て直すには、設備の整備と同時に、人が安全に移動できる条件を取り戻すことが欠かせない。

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