SNSの相手、知らない人とは限らない。
21カ国の最新調査で見えたのは、「知らない人に気をつける」だけでは守れない現実だった。

知らない人だけを警戒すればいい?
SNSで危険なメッセージが来る場面を想像すると、多くの人は「知らない大人」を思い浮かべるかもしれない。知らないアカウントを承認しない。怪しいDMに返事をしない。そう教わってきた人も多い。
ところが、2026年9月にUNICEFが公表した21カ国の調査では、デジタル技術が関わる性的搾取・虐待の57%で、相手は子どもがすでに知っている人だった。友人、同級生、恋人、家族なども含まれる。
問題は「ネットには知らない悪い人がいる」だけでは説明できない。いつもの人間関係にスマホが入ったとき、何が変わるのか。そこを見る必要がある。
5人に1人。でも「世界の5人に1人」ではない
調査は、カンボジア、エチオピア、ケニア、ナミビア、フィリピン、タイ、ベトナム、ブラジル、コロンビア、メキシコ、パキスタンなど21カ国で行われた。対象はインターネットを使う12〜17歳、約2万1,000人だ。
UNICEFは、この21カ国で1年間に推定2,000万人、ほぼ5人に1人が、デジタル技術によって可能になったり拡大されたりした性的搾取・虐待を少なくとも一度経験したと推計する。
ここには、望まない性的コンテンツを見せられること、性的な会話や画像共有を強要されること、本人の同意なく性的画像を拡散されることなどが含まれる。
ただし、この「5人に1人」を世界全体の割合として読むのは正しくない。調査国のインターネット利用児童を代表する数字で、国によってデータ収集年も異なる。強い数字ほど、範囲を正確に見る必要がある。
被害の約6割は、いつものSNSで起きた
もう一つ意外なのは「場所」だ。
調査では、事例の約60%が主要なSNS上で起き、14%はオンラインゲームに関連していた。子どもが普段、友達と話したり遊んだりする場所と、被害が起きる場所が重なっている。
オンラインの危険を「怪しいサイトに行かなければ大丈夫」と考えると、この現実を見落とす。DM、画像共有、偽アカウント、推薦機能など、ごく普通の機能が信頼関係を作る道具にも、悪用する道具にもなり得る。
技術そのものが虐待を生むわけではない。しかし、接触のしやすさ、画像を複製する速さ、拡散後に回収しにくい性質は、被害の形を変える。
友達や恋人なら、境界線はもっと見えにくい
相手を知っていることは、安心材料になる。同時に、断りにくさも生む。
恋人から「自分だけに送って」と画像を求められる。友達同士のチャットで性的な冗談が続く。関係を壊したくなくて、嫌だと言えない。別れた後に、以前送った画像が共有される。
こうした状況では、「知らない人についていかない」という安全教育だけでは足りない。
必要になるのは、同意は一度与えれば永久に続くものではないこと、恋人や友人でも嫌な要求は断ってよいこと、画像を送った人ではなく無断で拡散した側に責任があることを共有する教育だ。
オンライン安全は、セキュリティの話であると同時に、人間関係の話でもある。
4割以上が、誰にも言わなかった
被害が起きた後にも大きな壁がある。
UNICEFによると、事例の40%以上は誰にも打ち明けられていなかった。警察、ソーシャルワーカー、ヘルプラインなど当局への報告は1%未満だった。
沈黙の理由として最も多かったのは、「どこへ行けばいいか、誰に言えばいいか分からない」ことだった。恥ずかしさや、自分も責められるのではという不安も、相談を難しくする。
だから「困ったら相談して」と書くだけでは十分ではない。誰に、どの方法で、何を伝えればいいのか。相談した後に画像削除や心理支援、捜査へどうつながるのか。入口が具体的でなければ、制度は存在していても使われない。
画面を閉じても、被害は消えない
デジタルの被害は「スマホの中だけ」で終わらない。
調査では、被害を経験した子どもは、経験していない子どもより自殺念慮・自殺行動や自傷を報告する傾向が4倍高く、不安も強かった。これは虐待がそれらを必ず直接引き起こすと証明する数字ではないが、被害経験と深刻な心理的苦痛が強く関連していることを示す。
画像がコピーされ続けるかもしれない。学校で誰が見たか分からない。知っている人が相手なら、翌日も教室や地域で顔を合わせる可能性がある。
「ブロックすれば終わり」ではない理由がここにある。
子どもに「気をつけて」だけで任せない
UNICEFの報告は、対策を子どもの自己防衛だけに置かない。
プラットフォームには、子どものプライバシーを初期設定から強くすること、望まない大人からの接触を制限すること、危険な行動を検知・報告しやすくすることなどを求めている。政府には法律、捜査、相談支援をつなぐ役割がある。
家庭や学校にも役割がある。ただし、スマホを取り上げることを最初の反応にすると、被害を話した子どもが「相談すると自分が罰を受ける」と感じることもある。
守る仕組みは、被害に遭わない完璧な子どもを作ることではない。何か起きたとき、責められずに戻ってこられる場所を作ることでもある。
「ネットの危険」ではなく、「関係の危険」を見る
この調査で見方が変わるのは、57%という数字かもしれない。
ネット上の安全を考えるとき、私たちは知らない人、怪しいサイト、偽アカウントに目を向けやすい。それらは確かに重要だ。
でも、デジタル技術は現実の人間関係と別の世界ではない。友人、恋人、同級生、家族との関係も、そのまま画面の中へ続いている。
だから必要なのは「ネットを怖がる」ことだけではない。
知っている相手にも境界線があること。嫌だと言えること。画像を無断で広げないこと。そして、何か起きた人を責めずに助けられること。
スマホの安全は、パスワードだけでは守れない。
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